この回では、「勉強が役に立つか?」をもう一段深く掘って、社会の中で人と一緒に生きるための“公共性”という視点から学びを整理します。
AIが強くなるほど、むしろ人間側に残るのは説明・合意形成・責任ある判断です。

この回でつかむポイント

  • 「公共性」とは何か(“いい人”の話ではなく、社会で通用するための技術
  • 公共性を掘り下げるキーワード:共感・民主主義リテラシー・公共インフラとしての知識 など
  • 公共性は、結局 ①言語 ②規範 ③判断(事実と意見/価値観/反証可能性) に落ちる

はじめに:AIが強くなるほど「公共性」が効く

最近のAIは、文章作成・要約・翻訳・質問対応などの性能が一段階上がり、日常で「考える前に答えっぽいものが出る」場面が増えました。
こうなると、学習の価値は「知識を持つこと」だけでは語れません。

では何が残るのか。私は、公共性(社会で通用するための土台)が残ると思っています。
ざっくり言うと、人と一緒に考え、合意し、責任ある判断をするための力です。

公共性とは:説明・合意形成・責任ある判断

「公共性」と聞くと、“道徳”や“いい人”の話に聞こえるかもしれません。
でもここで言う公共性は、もっと実務的で、社会の中で通用するための技術です。

  • 説明:相手に伝わる形に言語化する
  • 合意形成:違う立場の人と折り合いをつける
  • 責任ある判断:根拠と見直し可能性を持って決める

そして、この「公共性」を学び取る装置が、まさに学校教育(教科+学校生活)です。
ここを“点数のため”だけに縮めてしまうのは、少しもったいない。

公共性を掘り下げる5つのキーワード

  • 共感(empathy):相手の視点を想像して理解する
  • 民主主義リテラシー:議論・対話・合意形成の土台
  • 知識=公共インフラ:みんなで共有して使える“共通の足場”
  • 正義・ルールへの視点:何を守り、何を優先するかを考える
  • 多様性の土台:違いを前提に、それでも一緒に進める仕組み

この5つは、結局は次の3つに収束します。①言語 ②規範 ③判断です。
ここから先は「公共性を、学習に落とすと何になるか」を具体化します。

人が公共性を学び取る意義は「①言語 ②規範 ③判断」

① 言語:自分の考えを“人に渡せる形”にする

公共性の第一歩は、説明できることです。
自分の頭の中で分かったつもりでも、人に伝わる形に言語化できないと、合意形成も判断も止まります。

国語の読解・記述は、まさにこの訓練です。
「筆者は何を主張しているか」「根拠はどこか」「自分の意見を条件つきで述べられるか」――
これは“テスト対策”を超えて、社会の中で使う力そのものです。

追記:表現の「伝わりやすさ」は技術(再現性がある)

  • 前提(状況)→主張(結論)→根拠(理由)→例(具体)→条件(但し書き)の順に並べる
  • 「何を言うか」だけでなく「どう構造化するか」が伝達の精度を上げる

② 規範:社会の“共通ルール”を理解し、運用する

規範とは、乱暴に言えば「みんなで守る約束」です。
でも規範は、単なる押しつけではなく、合意形成の結果として成立するものです。

たとえば校則、地域のルール、法律、契約、マナー。
こうしたものを「なぜ必要か」「誰にとって何を守るか」という形で理解していくと、社会の見え方が変わります。

規範を学ぶときの観点(例)

  • 目的:何を防ぎたい/何を実現したい?
  • 対象:誰を守る?誰に負担がかかる?
  • 例外:一律だと困るケースは?
  • 運用:現場で守られる仕組みになっている?

③ 判断:事実と意見を区別し、価値観と反証可能性で裏付ける

情報があふれ、事実と意見が混ざりやすい時代ほど、「何が事実で、何が意見か」を区別する力が重要です。
これは健康的な思考の土台であり、公共性の中核です。

(1)事実と意見を区別して論じる

たとえば理科なら、仮説→予測→検証/対照実験/再現性/測定誤差という観点で「事実」を切り分けます。
社会(地理)なら、データやグラフを読みつつ、相関関係と因果関係を区別する視点が必須です。

こうした“切り分け”ができると、集団が錯誤に落ちにくくなり、集団の強みを発揮しやすくなります。

(2)価値観を見極める力(「区別を区別せよ」)

述べられた意見には、必ず何らかの価値観(考え方の特長)が含まれます。
さらに言えば、問いの立て方や枠組み(フレーム)自体にも価値観が反映されます。
この“前提”を読み解くには、国語の論理読解が効きますし、数学や英語の視点も強力な補助になります。

(3)反証可能性を意見に潜ませておく品格

反証可能性とは、「どんな事実が観察されたら自分の結論を見直すか」を、あらかじめ置いておく態度です。
これは相手に開かれた態度であると同時に、自分の学びを前に進める安全装置でもあります。

反証可能性の6要素

  • 結論(いまの仮説)
  • 指標(何で測るか)
  • 閾値(どの数値になったら見直すか)
  • 期間(いつまでに判定するか)
  • データ源(どこから取るか)
  • 見直し日(次に判断する日)

活用例(短く)

  • 学習:英単語テストの平均正答率が「3週間で+15点」に届かなければ、暗記法を見直す(データ源:週次小テスト/判定日:第3金曜)
  • 校内ルール:遅刻対策の掲示で月次遅刻件数が「20%未満」しか減らなければ、連絡手続の見直しを検討(データ源:出欠記録/判定日:月末会議)
  • 地域活動:図書館の開館延長で19時以降の来館者が「3か月で+30%」に満たなければ、曜日限定に戻す(データ源:利用統計/判定日:四半期レビュー)

総括:AIが配るのは「知識」。人が育てるのは「公共性」

AIが「答え候補」を配ってくれるほど、私たちはむしろ
説明できること/合意形成できること/責任を持って判断できること
が大事になります。

だからこそ、学びは「点数のため」だけで閉じずに、
社会で通用する教養(公共性)として積み上げていく意味があります。

静かなご案内(必要な方へ)

「うちの子の場合、今はどこを優先すべき?」「国語の読解を、どう“説明”に結びつける?」など、
学びの順番を一緒に整理するだけでも前に進みやすくなります。
ご相談は短くて大丈夫です。

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▶ よくあるご質問を見る

ご家庭向けガイド(短い具体例つき)

小学生のご家庭へ

公共性は、いきなり「社会」として教えるより、まずは説明の練習が一番効きます。
たとえば「今日学校であったことを、3つに分けて話してみよう」「どうしてそう思ったの?」と、短い対話を重ねるだけで土台が育ちます。

中学生のご家庭へ

中学生は、点数と現実の間で揺れます。
だからこそ「国語=読めるか」「数学=解けるか」だけでなく、
“根拠を言えるか”“条件つきで言えるか”を一緒に確認すると伸びが出ます。

  • 「それって本文のどこが根拠?」
  • 「この結論が変わる条件は何?」

高校生(受験期)のご家庭へ

受験期は「正解を速く出す」方向に寄りがちです。
ただ、AI時代はそこだけだと弱い。
学習を公共性(説明・合意・判断)へ接続すると、受験の先でも崩れにくい実力になります。

次回予告:第4回「国民意識から考える“人間ならではの学び”」

次回は、もう少し視点を引いて、「AIが強いこと/人間が担うべきこと」を、
国民意識・文化・言語の土台から整理します。

次回のキーワード(予定)

  • 「人間ならではの学び」とは何か
  • 言語・文化・共同体の“前提”
  • AIが得意なこと/人間が背負うこと

第4回へ進む