アウトプット、「例えば」と家庭教師の授業

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今回は、私(呉市の家庭教師の白井)が最近指導においてウェイトを置いていること、特徴づけようとしていることについて、書きます。

 

最近は、私が現役学生だったころやそれ以前と比較して、明らかに教材や学習支援サービスなどは増えています。

それは、量的にというだけではなくて、質的にもそうです。

※わかりやすく、ためになる、教材が大幅に増加しているということです。

しかし、そういう傾向とは対照的に、学力のある生徒さんとそうとはいえない生徒さんとの間の格差は依然として存在します。

今回の記事のテーマは2つあり、1つはこうした状況の背景にあるのは「教材側」の問題ではなく、「学ぶ側」や「教える側」の問題ではないか、という問題点の指摘です。

もう1点は、そうした状況に対して呉市の家庭教師の白井としては、どのように対応しているのか、という実践についてです。

現状の課題:情報飽和の現代

いま、書籍かネット上のコンテンツ(記事、動画など)を問わず、教育関係の情報は飽和しているといってよい状況です。

※もちろん、情報(の整理)が必ずしも十分とは言えない分野(入試制度の選択、マイナー科目の教育情報など)もありますので、あくまで一般的にということです。

とりわけ、中学や高校の勉強については、最近は無料のウェブ記事、動画などでも相当に質の高いものもあり、それだけで十分に勉強できる、という環境が出来上がっています。

また、いわゆる「教材ルート」についても、相当に開発されており、それを適切になぞることができれば、かなりの学力がつくことが期待できるのが、現代の学習です。

 

一方で、そうした「恵まれた」状況にもかかわらず、学習や試験などでうまくいっていない生徒さんもいらっしゃいます。

ここからは、私の経験談の域を出ませんが、現代の「家庭教師や個別指導が必要な生徒さん」というのは、次のようなタイプではないかと思っています。

  1. 学習しようとする意欲が何らかの理由でない、十分ではないため、目の前に教材があったとしても、1人では学習できない、しないという生徒さん。
  2. 学習したいという意欲や試験で頑張りたいという気持ちはあり、目の前に十分な量と質の教材はある一方で、それらをどう活かして学習するのか、いまいち不透明な生徒さん。
  3. 1や2とやや重複しますが、「わからないところがわからない」ために、目の前によい教材が十分にあっても、それを試験の結果改善等に活かすのが難しい生徒さん。

現状としては、このような生徒さんは、家庭教師が個別指導などを利用されない場合には、中学高校卒業まで(つまり、社会に出るまで)放置されていることも多いのではないでしょうか。

また、上記のような状況は、いわゆる「インプット型」の授業においては、いかに授業の質が高く、教師の側がどれだけ工夫していたとしても、対応することは難しいです。

つまり、集団授業(や動画授業)には、確かに様々な意味、意義はある一方で、それだけではどうしても、結果が十分に出せない生徒さんもいらっしゃるということです。

※逆に言えば、1対1の個別指導塾や家庭教師ならば、教える側がたとえ経験の浅い学生教師であっても、結果が出やすいということには、こういう背景事情があります。

現状の課題への対処(一般論):アウトプット型の授業・指導・学習

インプット型授業は、現在非常に質の良いものが、大量に出回っているので、これに対して対抗したり、付け加えたりするということには、そこまで意味がないと思っています。

逆に言えば、今不足している(というよりも常に不足しがちな)ものは、生徒さんのアウトプットを教師が観察し、分析して、生徒さん自身の弱点や不足している点を明らかにし、それを補強するという、地道で具体的な作業ではないでしょうか。

実際、ある生徒さんが現状どのような理解度で、どれくらいのアウトプットができるのか、ということは、生徒さんごとに異なりますし、同じ生徒さんであっても、刻一刻と変化しています。

そのため、「正解」となる教え方も、刻一刻と変化するため、「これを絶対にやっておけばよい」ということはない(言い換えれば、変化している)ということです。

つまり、教材(書籍、動画など)はもちろん必要ですが、それらはあくまで道具に過ぎなくて、それら道具をどのように使うか、という「使いよう」が教える側にとっては問われているということになります。

※最近は、「道具(教材)」は、よほどのものでない限り、何でもよいと考えるようになっています。つまり、塾用教材でも、市販教材でも、学校配布教材でも、使い方が重要ということです。

重要なのは、生徒さんの理解度を教師が正確に、具体的に把握することであって、教え方をどうしようか、というのは、そのあと出てくる問題です。

現状の課題への対処(具体例):アウトプットを鍛える指導法の一例

インプットについては、私はあまりこだわりはない一方で、アウトプットについてはこだわりがあります。

例えば、現在行っている指導法としては、生徒さんの成績に応じて2パターン用意しています。

成績が4の人を5に上げる指導法

これは、ある一定水準以上の暗記や理解度がある生徒さんに向いているやり方です。

まず、ノート(あるいはルーズリーフ)を用意し、そこにその教科について、自分が理解していることを、なるべく整理してまとめてもらいます。

このときは、ほかに教科書や用語集などは見ないようにします。

そして、出来上がったものについて、教師が加筆修正などを行って、一応完成させます。

※つまり、この方法はまとまった知識が頭の中にない状況ではあまり機能しません。

 

この方法を行うと、生徒さん自身がどれくらい情報を知識として持っているのか、知識の整理ができているのか、ということがわかります。

つまり、単語の羅列、情報の羅列になっている場合には、それをなるべく整理して、丸暗記する要素をなるべく減らします。

 

また、書いてまとめていく中で、もう少し知識を補えたら書けるという内容も出てきます。

こういう、「必要性を感じた時」こそが、覚え理解するチャンスですので、このような時に、教師が多少インプットをすれば、結果が出やすいです。

※逆に言えば、必要性を感じていない状況では暗記は苦痛になりやすいです。

成績が3以下の人を平均点(以上)に上げる指導法

成績が平均点を下回っている場合には、やや工夫が必要になります。

この場合には、まず課題やワークをやる目的は、「わからないところ(できないところ)をわかる(できる)ようにする」ことである、ということを理解してもらう必要がります。

具体的には、まず何か問題集などをやってもらいます。

そして、丸付けをやってもらい、〇だったところと×だったところを明確にします。

そして、×だったところは、暗記するものなら暗記してもらい、理解するところならば、理解できるまで練習してもらい、必要に応じて説明を加えます。

そして、ある程度覚えた(できるようになった)ら、もう一度×だったところをやってもらいます。

そして、〇だったところと、×だったところをもう一度明らかにして、上記の流れを繰り返す、というわけです。

 

このやり方をする上での注意点としては、単純作業や同じ作業の繰り返しになるため、1人ではなかなか続かず、教師と一緒でもやる気を継続するのが難しい場合がある、ということです。

そのため、教師としては、〇×の指摘や説明などに加えて、生徒さんのモチベーション維持をすることが重要になります。

※こういう時は、わかるようになった(できるようになった)という結果をほめるとともに、正しい過程で学習しているということ自体をほめることも大切だと思います。

隣接する課題:「例えば」の重要性

私はものごとを具体的に考えることは、抽象的に考えることと並んで重要だと思っています。

学習に当てはめて言えば、ある教科のあるテーマ(単元)について、自分がどれだけ具体的な知識を展開できるか、ということです。

もしも理解が抽象的なレベルで終わっているならば、知識を具体化していく過程で、不十分な点に気が付くはずです。

例えば、中学1年生の数学の話でいえば、ちょうどこの時期は比例と反比例が終わったくらいです。比例と反比例は、公式自体は非常にシンプルで覚えることは少ない領域です。しかし、比例や反比例の公式や、比例定数の求め方を知っていたとしても、なにが比例で何が反比例なのか、という判断ができないと、公式を当てはめることができません。

これは、中1以外の数学にもいえます(どういうときに、どういう解法が最適なのか、という考え方:知識のカテゴリー分け、現実への当てはめ)し、数学以外の科目についても同様のこと(この教科書、参考書の記述はどういう場合にまでいえるのか:射程)が言えます。理屈は、現実に当てはめられて使えてこそ、意味があるものです。最近は、こういった「例えば」に関するよい教材、コンテンツも増えてきたと思うのですが、そういう教材を活用して、自分自身が「例えば」という考え方を持ち、うまく運用できるようになるのかどうかは、また別の問題です。

 

そのため、家庭教師(個別指導塾)としては、様々な学習内容に対して、「例えば」という視点をもって、生徒さん(学習する人)のサポートに回る必要があります。

補足:インプットやアウトプットとの関連

この「例えば」という視点は、インプットとアウトプットの両方で役に立つと思っています。

インプットについては、「この知識はこういう状況で使う(逆に言えば、こういう状況ではこの知識は使えない)」というように、「使いどころ」を付け加えて説明する、という姿勢を促します。

アウトプットについては、「(生徒さんは)こういう状況でこういう知識を使った(のではないか)」「(生徒さんは)この知識は、こうグループ分けしているな」というように、生徒さんの考え方を観察・分析する際に効果を発揮し、「この問題は理解できているな/できていないな」というよりも、もう一段具体的で実用的な情報が得やすくなります。

このように、教師としても、生徒さんとしても、どちらにとっても生産的な考え方ですので、これについては、もっと洗練していきたいです。

総括:アウトプット型指導は大変だが意味はある

「AはBである」というような、インプット型の指導よりも、こうしたアウトプット型の指導は、生徒さんの様子を逐一観察、分析する必要があるため、骨が折れる地道な作業になります。

しかし、こういうやり方が、前述の情報飽和社会における、必要な指導法ではないかと思っています。

また、知識の内容そのものの価値も重要ですが、どのようにして知識を身に着けていくのか、どのようにして知識を整理して身に着けるのか、という過程のほうもまた重要ではないでしょうか。

 

呉市の家庭教師の白井としては、生徒さんの将来の選択肢が少しでも豊かなものになるように、このようにアウトプットを重視した指導を行っています。