今回は、中学2年生の生徒さんと太宰治「畜犬談」を読み、 30秒要約を作る練習を行いました。
同じ「畜犬談」については、別の記事で 心情変化・仮説・対比を使った読解授業 として整理しています。 そちらは記述答案や読解の型を中心にした内容でしたが、 今回は中学2年生向けに、文章全体を短くまとめる 要約練習として扱いました。
国語の要約は、「なんとなく大事そうなところを書く」だけでは安定しません。 そこで今回は、最初に要約の型を覚え、 その型に本文の内容を入れてから、少しずつ肉付けしていく方法をとりました。
もくじ
Toggle1 今回の目標:30秒で話せる要約を作る
今回の授業で目指したのは、文章全体を 30秒くらいで説明できる要約にすることです。
いきなり30秒要約を作ろうとすると、何を書けばよいか分からなくなります。 そこで、まずはもっと短い 15秒要約を作り、そのあとで本文から情報を足していく形にしました。
今回の流れ
① 要約の型を覚える
② 15秒要約を完成させる
③ 本文から肉付けする材料を拾う
④ 30秒要約に仕上げる
このように段階を分けることで、要約を「センス」ではなく、 手順のある作業に変えていきます。
2 まず覚える型:「はじめはA。Bがきっかけで、Cになった」
今回使ったのは、心情変化をまとめるための型です。
はじめは、Aだった。
しかし、Bがきっかけで、
Cになった。
小説文では、出来事をただ順番に並べるだけでは、要約として弱くなることがあります。 特に「畜犬談」のように、語り手の気持ちが変化していく文章では、 最初の気持ち・変化のきっかけ・変化後の気持ち を押さえることが大切です。
- A:はじめの気持ち・状態
- B:気持ちが変わるきっかけ
- C:変化したあとの気持ち・状態
このように型を先に決めると、本文の中から何を拾えばよいかが見えやすくなります。 国語の読解全体については、 国語・現代文カリキュラム でも詳しく整理しています。
3 15秒要約:まずは骨組みを作る
まず、生徒さんと一緒に「畜犬談」を次のような形で整理しました。
はじめ、私はポチを嫌っていた。
しかし、薬が効かず、ポチが生きていたことに気づき、
ポチには罪がなかったと考えるようになった。
これが、今回の15秒要約の骨組みです。
ここで重要なのは、Bの部分をまずは 「薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいた」 と短く押さえることです。
要約の初期段階では、細かい場面説明を入れすぎると、 かえって全体の流れが見えにくくなります。 そのため、15秒要約では、 語り手の気持ちを変化させた中心的な要因 だけをまず固定します。
4 Bは「骨格」と「肉付け」に分けて考える
今回の授業で特に大切なのは、Bの扱いです。 Bは、15秒要約では短くまとめます。 しかし、30秒要約にするときには、本文中の具体的な場面を加えて肉付けします。
15秒要約のB
薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいた。
30秒要約で足すBの肉付け
練兵場で、赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後、薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいた。
このように考えると、要約が作りやすくなります。 まずは短い骨格を作り、そのあとで本文の具体的な出来事を足していくからです。
ただし、肉付けをするときも、ただ出来事を長く書けばよいわけではありません。 あくまで中心は、 その出来事が語り手の心情変化につながっていること です。
5 本文からA・B・Cに肉付けする
15秒要約ができたら、次は本文から A・B・Cそれぞれに肉付けする材料を探します。
今回のノートでは、おおよそ次のように整理しました。
A:はじめ
語り手は、皮ふ病だったポチを嫌っていた。 家内と話し合い、ポチを殺そうとするほど、強い嫌悪感を持っていた。
B:きっかけ
15秒要約では、薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいたことを中心にする。 30秒要約では、その前に、練兵場で赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後、という場面を加える。
C:あと
語り手は、ポチには罪がなかったと認める。 そして、今までのことを白紙に戻すような気持ちになっていく。
ここで大事なのは、本文の情報を全部入れようとしないことです。 30秒要約では、細部をすべて入れるのではなく、 心情変化に関係する材料を選ぶ必要があります。
今回であれば、Bの中心は 薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいたこと です。 そして、30秒要約では、その場面をより具体的にするために、 練兵場で赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後 という情報を加えます。
6 30秒要約の完成例
以上をつなげると、30秒要約は次のようになります。
はじめ、私は皮ふ病だったポチを嫌い、家内と話し合って殺そうとするほどだった。 しかし、練兵場で赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後、 薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいたことで、 ポチには罪がなかったと認め、今までのことを白紙に戻して、 ポチを受け入れていく気持ちになった。
この要約では、単に「あらすじ」を並べているのではありません。 最初の気持ち、 変化のきっかけ、 変化後の気持ち が順番に入っています。
また、15秒要約では省略していた 「練兵場で赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後」という場面を入れることで、 30秒要約としての具体性も出ています。
7 長くするときの注意:一部だけを長くしない
今回の授業では、「長くするためのアイデア」も確認しました。
要約を15秒から30秒に伸ばすとき、多くの生徒さんは、 印象に残った一部分だけを長く書いてしまいがちです。 しかし、それでは文章全体のバランスが崩れます。
大事なこと
A・B・Cをバランスよく足す。
一部だけを長くしない。
たとえば、練兵場でのけんかだけを詳しく書きすぎると、 語り手の心情変化が見えにくくなります。 逆に、「ポチには罪がなかった」とだけ書いても、 なぜそう考えるようになったのかが分かりません。
要約では、文章全体を見て、 どの部分にどれくらい情報を足すか を考えることが大切です。
8 5W1Hで足す。ただし「なぜ」が特に大事
肉付けするときには、5W1Hも使えます。
- いつ
- どこで
- だれが
- 何をした
- なぜそうなった
- どのように変わった
ただし、国語の要約では、単に情報を増やせばよいわけではありません。 特に重要なのは、 なぜ気持ちが変わったのか という理由です。
今回であれば、 「練兵場で赤毛の犬とけんかしてポチが勝った」 という出来事だけでは、まだ十分ではありません。 その後に、 薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいた という心情変化の中心を入れる必要があります。
さらに、その結果として、 語り手がポチに対する見方を変え、 「ポチには罪がなかった」と考えるようになったことまで入れると、 要約としてまとまりやすくなります。
設問が何を求めているかを読む力については、 国語の問題文の読み方 も参考になります。
9 要約は「本文を短くする」だけではない
要約というと、本文を短くする作業だと思われがちです。 しかし、実際にはそれだけではありません。
要約では、本文の中から大事な材料を選び、 それを型に入れて、聞き手に伝わる順番に並べる必要があります。
要約とは、本文をただ短くすることではなく、
大事な材料を選び、型に入れ、伝わる順番に並べることです。
今回の授業でいえば、本文から拾うべき中心材料は、 「ポチが嫌いだったこと」、 「薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいたこと」、 「ポチには罪がなかったと認めたこと」です。
そして30秒要約に広げるときには、 Bの前に 「練兵場で、赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後」 という具体的な場面を加えます。
このように、要約では 中心となる骨格と 本文から加える肉付け を分けて考えることが大切です。
国語を「なんとなく」ではなく、再現できる作業にする考え方は、 国語と再現性 の記事にもまとめています。
10 まとめ:中学生の要約は、型から始めると書きやすい
今回の「畜犬談」の授業では、 まず心情変化の型を覚え、 15秒要約を作り、 本文から材料を拾って30秒要約に広げました。
この流れにすると、生徒さんは 「何を書けばよいか分からない」 という状態から抜け出しやすくなります。
- はじめの気持ちを押さえる
- 変化のきっかけを短く押さえる
- 30秒要約では、本文の具体的な場面を加える
- 変化後の気持ちをまとめる
- A・B・Cをバランスよく肉付けする
- 一部だけを長くしない
- 5W1H、とくに「なぜ」を意識する
今回の本文では、 薬が効かず、ポチが生きていたことに気づいたこと が、語り手の気持ちを変化させる中心的な要因でした。
ただし、30秒要約では、そこに至る場面として、 練兵場で赤毛の犬とけんかしてポチが勝った後 という情報を加えることで、要約がより具体的になります。
国語が苦手な生徒さんほど、いきなり自由に書かせるよりも、 まずは型を使ったほうが書きやすくなります。 型があることで、本文のどこを見ればよいか、 どの順番でまとめればよいかが分かりやすくなるからです。
家庭教師の白井では、本文を読むだけで終わらせず、 要約・記述・説明に使える形へ変えていくことを大切にしています。 国語指導の全体像は、 国語の記事まとめ や 国語・現代文カリキュラム もあわせてご覧ください。
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家庭教師の白井では、1対1指導の中で、 本文の読み取り、要約、記述答案の作成まで、生徒さんの横で一緒に整理していきます。