ChatGPT:AIを活用して学習に活かすには?
AI(ChatGPT)が教育の世界に与えた影響
自然言語で質問できて、答えが返ってくるChatGPT(生成AI)ですが、最近ますます進化しています。
少し前までは、
- テキストで質問して、テキストで答えが返ってくるだけだった→今は、画像生成、画像読み取り、音声入力・出力、動画生成・動画編集まで可能(一部有料プラン)
- スマホアプリでは、1日の質問回数が制限されていた→今は、回数制限なし(一部の機能は、制限あり)
というように、AIの進歩は非常に素晴らしく、これからの新機能実装も非常に楽しみです。
このように、AIが大変な高機能になっていく中で、塾や家庭教師といった教育サービスにも、大きな影響を与えつつあります。
例えば、ChatGPTを活用すれば、
- 知らない単語の意味はもちろん、わからない記述問題の答えや、自分の記述の添削もしてもらえる。
- 自分の現時点での学力を診断し、それに応じた学習アドバイスもしてくれる。
- 科目やレベル、目標などを設定すれば、参考書学習ルートもある程度提案してくれる。
- 近隣の、教育サービス(塾や家庭教師)について、それぞれの強みや向いている層などを検索し、提案してくれる。
などといったことが可能になっています。
つまり、今までは詳しい人(家庭教師やコンサルタント)に尋ねるしかなかったことであっても、AIに質問すれば、答えが返ってくる時代になったということです。
逆に言えば、今まではそういう必要性を満たすために求められていた人々に対するニーズも変化してきているということです。
今回は、呉市の家庭教師の白井という、ローカルで個別サポート的な教育サービスとして、ChatGPT(AI)をどう活用し、どう向き合っていくのがよいと思っているのか、ということについて書いていきます。
※本画像は、私の自画像をもとに、ChatGPTの画像生成機能(Sora)を用いてアニメ風にしたものです。
具体的な活用事例
ChatGPTは、特にこの科目だけに対応しているということはなく、幅広い学習内容をカバーし、かつ学習内容を超えたビジネス用途にも利用できます。
活用例①英作文の添削
英作文は、最近は英検のほか、高校入試や大学入試でも課されるようになっています。
とりわけ、内容を限定しない、自由英作文は出題度合いが多くなっており、このことは、答えや解答例をみるだけでは不十分であり、自分自身の作文について、内容面、文法面、語彙面、構成面などの様々な観点から添削が必要になっていることを意味しています。
ChatGPTは、そうした「人によって異なる解答」に対して、添削してくれます。
ただし、AIに対して具体的でわかりやすい回答を期待するならば、どういうインプット(質問)をするかは、考えなくてなりません。
例えば、ChatGPTに英作文の添削をする場合には、次の点を入力すべきでしょう。
- 問いの内容と、解答の条件:何について書くことが求められ、また文字数や構成はどのように指定されているか。
- 自分の答え(英文):英文自体は、読める文字で書いていれば画像認識で入力することも可能。
- 自分の答え(日本文):自分が英文で伝えようと思っていた内容を、日本語で書く。
- 採点基準:英検の基準なのか、だとすれば級はどれか(3級や準2級など)、大学入試の基準なのか、高校入試の基準なのか、など。また、採点の観点があるならば、それも記入(例:英検の場合には、①内容、②構成、③語彙、④文法)
また、添削した英文について、詳しく学びたい場合には「上記の英作文解答例について、文法と語彙の解説をして」などの質問をすれば、かなり具体的な返答が期待できます。
ほかにも、「上記の英作文解答例が書けるようになるための、和文英訳や、語句整序(並び替え)問題を作って」というように、練習問題を作ってもらうこともできるほか、「上記の英作文をする生徒の特性、現状でのレベルと、英検3級合格に向けた学習アドバイス(2週間程度)を作成して」と質問すれば、やはり結構具体的な返答が返ってきます。
このように、以前は先生(学校の先生、塾や家庭教師の先生など、詳しい人)がいないと難しかった英作文の学習が、現状は1人でもかなりできるようになっています。
逆に人がいないと難しそうな英語学習:スピーキング
一方で、英会話はAI相手にする場合と、人間相手に面と向かってする場合では、少し自分の気持ちようが異なると思いました。
確かに、ChatGPTの有料プランでは、AIと対話することができるのですが、一方で話す側の人間は、目の前の相手がAIなのか人間なのかということは、区別していますから、実際に人間と面と向かって英語で話す練習も必要でしょう。
また、人間はChatGPTと違い、さまざまな人がいらっしゃる可能性があり、自分の言ったことがAIならば、理解してくれるけれども、目の前の人には伝わらない場合も考えられます。
そのような、人の性質を理解しながら、その人に会った話し方、伝え方を考えていくという意味では、AIだけではなく、人間が学習のパートナーとなる必要性は高そうです。
活用例②レポートや研究内容の提案
全く0から、レポートや研究をしていくのは、いろいろな意味で困難を伴います。
これが、今までサポーター(家庭教師の先生や、コンサルタントなど)のアドバイスを聞いたり、本を買って読んだりしたら、解決していたのは、それはそうした人々は、生徒さんの得意分野や興味関心を知っており、それに応じたアドバイスをしてもらえたからです。
逆に、AI(ChatGPT)を活用する場合には、そうした自分自身の情報と求められていることの内容(興味関心、知識レベル、課題の要求、期限)を入力する必要があります。
いくらAIが優秀であっても、それに対して入力する人の質問力が不十分だと、あいまいで一般的な答えしか返ってきませんので、なるべく具体的で個別的な質問ができることが求められます。
ヒアリング能力、自己表現力、質問力の重要性
おそらく、これからのAI時代において重要なのは、自分の求めていること、やりたいことを明確にAIにインプットする能力だと思います。
すなわち、母国語力(国語力)が、これからはますます重要になってくるということです。
逆に、巷ではとても重要だといわれている、英語力については、確かに重要だとは思うものの、AIが代替してくれるようになってくれば(言語の壁がAIによって緩和されれば)、そこまで必須とは言えなくなるのではないでしょうか。
自分の母国語をうまく使いこなし、自分の頭の中にあることを自然言語AIにも理解できるように入力することで、今までの時代には得られなかった成果が得られるようになるでしょう。
つまり、「自分の思っていることを正確に表現できる力」「具体的で個別的な質問ができる力」がこれからは、ますます重要になってくるだろうということです。
また、塾や家庭教師(とりわけ個別指導サービス)の先生にとって重要なのは、生徒が言語化できないような事項も含めて、ヒアリングして、言語化してあげる力ではないでしょうか。
ChatGPTは、確かに便利ですが、使いこなす人のスキルによっても、得られるものは大きく異なりますので、AIを自分の手足として活用できるように、生徒さんの国語力を鍛え、質問力を高めることが、これからの時代の教育におけるニーズだと考えています。
他教科でもAI利用が活きる場面も
数学の証明問題、理科や社会の説明問題(記述答案)の添削にも、ChatGPTは活用できます。
自分の伝えたいことがそもそも伝わっているのかどうか、また内容は十分なのかどうか、ということも、問題の内容や求められているレベル、あるいは解答例などをきちんと入力することで、精度の高い返答が期待できます。
また、知識や理解が不十分な分野についても、自分の理解度や目指すレベルなどを明確にして質問すれば、それに応じた回答をしてくれます。
つまり、いわゆるQ&A作業において、AI(ChatGPT)の右に出るものはいないということです。
問題は、その”Q:Question”をどうするかだけであって、そこは上述の通り、使う人のスキルが試されるところだという訳です。
AIが便利すぎて、自分自身をレベルダウンさせないために
このように、使いようによっては、大変便利なAI(ChatGPT)ですが、それによって自分自身のスキルがレベルダウンしてしまうことは、避けたいところです。
例えば、英作文については、確かにChatGPTを活用すると得られるものは大きいですが、あくまで試験の答案を書くのは自分自身であるという事実は変えられないため、自分自身のスキルをAIを活用して、高めていくという考えは必要でしょう。
そのため、問題の答えをAIに求めるというよりは、問題に取り組む自分自身のやり方は十分だったのかという評価をAIにしてもらい、また自分自身では気づきにくい、自分の癖や欠点などをどう修正していくのが良いのか、という助言や指導を求めるのにAIを使うべきでしょう。
また、AIに依存しすぎて、AIの言っていることが本当か、(ある程度はあっているとしても)十分なのか、疑う姿勢も必要です。
そのため、AIを使う側の人間も、これからのAI活用時代に適応していくことが必要です。
総括:生成AIが変えた物事のウェイト(学ぶべきことの変化)
このように、生成AIの登場によって、これまで人間社会で重視され、身に着け鍛えるべきだとされたことに変化が生じています。
これは、昔に電卓がなかった時代には、そろばんを活用して計算を素早くすることが求められていた一方で、電卓やPCの登場によって、今度は計算力よりもデータ入力や結果を分析しまとめる力が求められるように変化したことと、似ています。
AIの登場によって、これまでは人間が担っていた、文献調査やまとめる作業といったことが、AIの仕事領域となりつつあります。そうなると、人間のすべきことはAIに対して、どのようなソースを分析させ、完成形として、どのようなものを求めるのか、というニーズを明確にするなどといったことが、中心となるでしょう。
また、AI(ChatGPT)は、財やサービスの供給側(生産者)になることはできても、需要する側(消費者)にはなれないという点も見逃してはなりません。
つまり、AIは手段であり、目的にはなりえないということです。
具体的には、人間自身が自分の能力や頭を鍛える必要性は、これからも残るということです。
ただし、その目的が、今までは「人間にしかできない仕事をし、成果を上げるため」だったのが、「AIを活用しながら、自分自身の判断力低下を防ぐため(要するに、「脳トレ」)」に変わりつつあるということです。
このことは、交通手段が進歩し、自転車など便利で速く走れる手段ができても、ランニングの重要性は残り、また重機やロボットが登場して重作業をこれらの手段で行えるようになっても、筋トレや体力づくりの必要性は、依然として残っていることと同様です。
このように、物事の意味・意義は、時代によって変わるものであり、ただそのスピードが上がっていることには、注意と備えが必要です。
呉市の家庭教師の白井としては、国語力はこれからも、異なった意味で重要になると考えていますので、国語の読解と記述の指導は、これからも力を入れて行っていこうと思っています。